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春浅し子の背の奥のしづけさよ

背中は表情よりも多くを語ることがあります。その奥にある静けさは、外の季節よりもまだ浅い春のようでした。季節の推移はそれぞれ違うのだと思いました。
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寒の朝斜光やわらか背を包む

二月の終わりの朝。空気はまだ冷たいのに、朝日はどこかやわらかい。自転車で通勤途中、車線を変えようと上体をひねった瞬間、斜めから差す光が背中を包みました。寒さの中にありながら、もう次の季節を含んでいました。
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木枯らしや音のゆくえに立つ子かな

風の音が響いた。一瞬、表情が止まる。子は席を立ち、窓の方へ向かった。冬の風も子供の好奇心もまた、強い。
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街灯に満ちてなお吹く虎落笛

仕事を終え、自転車で帰る夜。街灯の光は、疲れた自分を迎えてくれる。その輪の中にも、冬の風は吹いている。安心の中に、自然の強さが満ちている。光と風を受けながら、今日も一日を終える。
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灰空に早梅白きまぶしさよ

30キロ走の途中、風と雪に打たれながら走っていました。空は灰色。脚も重く、心も折れかけていました。そのとき、遠くに早梅が見えました。白と淡い紅が、灰色の世界の中で地味ではあるが、浮かび上がって見えました。揺れもせず、ただ佇んでいる。励まされ...
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寒月やアポストロフィの行方

アポストロフィ’s「〜の」と結ぶ、小さな印。”誰かの”ということばが、移ろいやすい、外の気配に感じる。その揺らぎに、心がふと動くことがある。耳はどこかで周囲の音を探している。軸を定めたいと願いながら、揺れている自分に気づく。揺れは消えない。...
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便座より冬日を知りぬひとりかな

朝、いつものように便座に座ったとき、ふと違和感がありました。冬のあいだは低温に設定しているその温もりが、今日は少しだけ熱い。「ああ、今日は気温が高いのだな」と、そこで知りました。窓を開ける前に、天気予報を見る前に、まず身体が季節を受け取って...
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冬澄むや校庭越しの声ひとつ

早朝、まだ街は目を覚まし切っていない。三階の窓を開け終え、校庭を挟んだ向こうのバス停から、扉が開く音のあと、「◯◯着です。」というアナウンスが澄んだ空気に乗って耳に届いた。冬の乾いた朝に、その一言がやけにやさしく響いた。日常が今日もきちんと...
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朝月や高く残りてペダル踏む

早朝の通勤路。信号待ちの空に、大きな橙色の月がまだ高く残っていた。少し背中を押されたような、寄りかかりたいような、そんな気がした。
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街灯の尽くるあたり虎落笛

夜道を歩いていると、規則正しく続いていた街灯が、ふいに途切れる場所がある。その先は、形のはっきりしない闇。足を踏み入れるのをためらうほどではないが、少しだけ胸がざわつく。そのとき、風が草木や門扉を鳴らす。虎落笛(もがりぶえ)の乾いた音が、闇...